私が病気の療養中に行っていたことの一つに、モーツァルトのレクイエム(以下モツレク)の収集があります。モツレクは、モーツァルト最後の作品であり、自身では完成させることができずに、死の間際に作品のスケッチを授かったジュスマイヤーによって完成されたということはすでにご存じの方も多いことでしょう。ジュスマイヤーの補筆に対する評価はいろいろあるようで、そのため、後の研究者によって手を加えられたいろいろなエディションが存在します。
しかし、ジュスマイヤー版を取り上げている演奏家が多いことからも窺い知れるように、ジュスマイヤーの手によって仕上げられたモツレクはかなり完成度の高いものです。
今回は、アーノンクールのモツレクを2点紹介します。
これは、バイヤー版を用いています。演奏家は以下の通り。
ラシェル・ヤカール(ソプラノ) Rachel Yakar, soprano
オルトルン・ヴェンケル(アルト) Ortrun Wenkel, alto
クルト・エクヴィルツ(テノール) Kurt Equiluz, tenor
ロバート・ホル(バス) Robert Holl, bass
ウィーン国立歌劇場合唱団 Konzertvereinigung Wiener Staatsopernchor (Chorus master: Gerhard Deckert)
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス Concentus musicus Wien
指揮:ニコラウス・アーノンクール NIKOLAUS HARNONCOURT
録音は、1981年10月&11月、ウィーン、ムジークフェラインとあります。CDの帯には、“峻烈な表現が最大級の衝撃を与えた永遠の名盤。”とあるのですが、この録音が世に出た当時は、かなりの衝撃を与えたとの話を私も聞いたことがあります。
そしてもう1点がこれ。
これはSACDハイブリッド盤ですが、普通のCD盤はこちら。
これもバイヤー版を用いています。ただし、CDケースの裏側には次のようにきちんと書いてあります。
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
WOLFGANG AMADEUS MOZART (1756-1791)
レクイエム ニ短調 K.626
REQUIEM IN D MINOR, K.626 [UNFINISHED]
フランツ・クサーヴァー・ジュースマイヤーによる完成版
[フランツ・バイヤーによるオーケストレーション改訂版]
COMPLETED BY FRANZ XAVER SÜSSMAYR
[NEW, REVISED EDITION BY FRANZ BEYER]
演奏家は以下の通り。
クリスティーネ・シェーファー(ソプラノ) CHRISTINE SCHÄFER SOPRANO
ベルナルダ・フィンク(アルト) BERNARDA FINK ALTO
クルト・シュトライト(テノール) KURT STREIT TENOR
ジェラルド・フィンレイ(バス) GERALD FINLEY BASS
アルノルト・シェーンベルク合唱団[合唱指揮:エルヴィン・オルトナー] ARNOLD SCHENBERG CHOR CHORUS MASTER: ERWIN ORTNER
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス CONCENTUS MUSICUS WIEN
指揮:ニコラウス・アーノンクール NIKOLAUS HARNONCOURT
録音は、2003年11月27日~12月1日、ウィーン、ムジークフェラインザールでのウィーン・コンツェントゥス・ムジクス創立50周年記念演奏会によるライヴ・レコーディングとあります。
CDの帯には、“この「レクイエム」は、これまでの自分の全ての録音の中で、おそらく最高の出来の一つであろう。――ニコラウス・アーノンクール 1981年の革命的な旧録音から20有余年を経て、巨匠が自信を持って再び世に問う、「モツ・レク」の決定的解釈。”と書いてあります。
私は、2003年に録音されたものを最初に購入し、聴いたのですが、その演奏は、もっともすばらしいののの一つであることと感じました。それだけに、革命的な録音と評される1981年のモツレクには興味があり、何とか探し当てて入手することができました。
1981年の録音と2003年の録音は、それぞれに良さがあり、それぞれの時の巨匠の価値観がよく表れたものだと思います。