昨日から今日にかけて読んだ『リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間』(高野登、かんき出版)に、こんな素晴らしいエピソードが記されていました。
アメリカ・フロリダ州にあるリッツ・カールトン・ネイプルズでの出来事です。ビーチ係が、砂浜に並んだビーチチェアを片づけていました。そこにひとりの男性のお客様がやってきて、こう告げました。
「今夜、この浜辺で恋人にプロポーズしたいんだ。できれば、ビーチチェアをひとつ残しておいてくれないか」
時間が来たら椅子を片づけるのが彼の仕事でしたが、そのスタッフは「喜んで」と言ってにっこりと笑い、ビーチチェアをひとつだけ残しておきました。
ここまでは、少し気のきいたホテルマンならば誰でもできることです。
ところが、そのスタッフは違いました。彼は椅子のほかにビーチテーブルもひとつ残しておいたのです。そしてテーブルの上に真っ白なテーブルクロスを敷き、お花とシャンパンを飾りました。またプロポーズの際に男性の膝が砂で汚れないように、椅子の前にタオルを畳んで敷いたのです。
さらに彼はレストランの従業員に頼んでタキシードを借り、Tシャツに短パンといういつものユニフォームから手早く着替えました。手には白いクロスをかけ、準備を整えてカップルが来るのを待っていました。
お客様が言葉にされた要望は、ビーチチェアをひとつ残しておくことだけだったにもかかわらず、です。
また、違うページでは、この事例についてとりあげて、「満足」から「感動」「感謝」へとすすんでいく様子を以下のように示してありました。
・不満…お客様のニーズが満たされていない状態
(例)ビーチチェアが海水で濡れていて、砂がついたまま。
・満足…お客様のニーズが満たされている状態
(例)ビーチチェアが一脚きれいに拭いて残されていた。
・感動…お客様の言葉にされないニーズが満たされている状態
(例)テーブルの上にはシャンパンとお花、ひざをつくためのタオル、そしてタ
キシードに着替えたスタッフの出迎え。
・感謝…お客様の感動がその後も続く状態
(例)毎年プロポーズ記念日にはスタッフから手紙が届く。また五周年、十周
年には総支配人から招待状が届く。このように、「満足」から、「感動」「感謝」のレベルを目指して初めて、サービスを超える瞬間がおとずれ、お客様に愛されるブランドへと育っていくのです。
人から感謝されるほどのレベルというのは、やはりそれほどたやすいことではありません。しかし、仕事と引き替えに報酬をもらうためには、その仕事は感謝されるほどのものでなくてはいけないとも言われています。感謝されて初めて良い仕事ができたと言えるのでしょう。
さて、今日はようやく東海地方の梅雨明けになったみたいですが、週末は久しぶりに出掛けてみようかなぁ……。伝説のパン屋さんにも行ってみたいし……。
そんなこと考えながら、一応何とか生きています。